【特別展】雪が描かれた紅型衣裳/朱漆と沈金の漆器
特別展示室では、毎月「国宝 琉球国王尚家関係資料」の美術工芸資料および文書資料をとおして、琉球国王尚家の歴史と王国時代の遺物をご紹介しています。
衣裳は「雪が描かれた紅型衣裳」をご紹介します。
一年を通じて温暖な気候が続く沖縄では、雪はほとんど降りません。
しかし琉球王国時代の紅型(びんがた)衣裳の中には、雪の文様が描かれたものがあります。その中には、雪のイメージにそぐわない暖かい色づかい使用されているものがみられます。
紅型衣裳の図案は、日本や中国から渡ってきた絵画や染め物を参考にして考案したと考えられています。
そうした中で、雪を見たことのない琉球の絵師が、雪の形だけを取り入れて図案を考案したことから、実際の雪の季節感からかけ離れた自由な色づかいになったのではないかと思われます。
調度品は、先月に引き続き「朱漆と沈金の漆器」をご紹介します。
琉球王国時代、漆器は中国や日本へ琉球の威信を示す献上品であり、王国の経済基盤を支える重要な工芸品でした。王府は貝摺奉行所(かいずりぶぎょうしょ)を設置して生産管理を行い、その高度な品質を維持しました。
琉球での漆器製作は15世紀頃から始まり、16~17世紀に螺鈿(らでん)・箔絵(はくえ)・沈金(ちんきん)など様々な技法が発達しました。
17世紀の薩摩侵攻以後は日本の武家社会の「唐風好み」にあわせた中国的な意匠の黒漆や、螺鈿の漆器が盛んに作られました。
王国時代の漆器の中でも、朱漆に沈金で緻密な模様を隙間なく埋め尽くしたものは、王家や上級士族だけが用いた格式の高い特別なものとされています。
文書資料は、国の重要指定文化財である伊江御殿家資料をご紹介します。家譜や仕次、辞令書といった文書をご覧いただけます。
王国時代の貴重な記録と、精緻な美術工芸品をぜひご覧ください。